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事務局・工房くらし月



 常 夏 草  1  長句(五七五)+短句(七七) 


丁未(ひのとひつじ)の年


**★☆***:*★☆***:*★☆**


1847年頃の、石川県を舞台にした冊子「常夏草」(分類:俳諧連歌)から

3名(碩水 格壷 卓丈)による連句(長句18作品+短句18作品)

をご紹介いたします。

常夏草

*原文:草書の縦書き / 変体仮名


学習用途でご利用の際は、お手数ですが必ず「原文」「原文解読」をご参照く

ださい
。「原文」「原文読解」以外には、読みやすさを考慮し、当サイト

でアレンジをした部分や、当サイトの理解不足による誤記が含まれる可能性が

あります。ご了承の上、お楽しみください。


(文責:表の現代語と*英文試訳 当サイト) 原文へのリンク
英語試訳は校正未了を含みます。一部に旧仮名遣いを使用しています。
 
また翌日も 日和(ひより)の風や 百日紅(さるすべり)

 碩水

 川を境(さかい)に 蚊(か)のおらぬ庭

Once again the next day, a gentle breeze passes by the Crape Myrtle;

Across the river lies a mosquito-free garden.


 格壷

からうすの 上がり具合も よくなりて

 卓丈

 子どもの粗相(そそぉ)叱(しか)り人もなし

The Karausu sounds well-pounding;

Spending alone, scolding mischievous children.


 水
(碩水)
 
敷きならす 呉座(ござ)につやつや 朝の月
.
 壷
(格壷)

 
露(つゆ)をかぶりて 逃ぐる野鼠(のネズミ)

While the mat is being spread out, the morning moon shines brightly;

The field mice run away in the dew.


 丈
(卓丈)

 何処(どこ)へでも 糞(ふん)して鳩(はと)の 嫌わるる

 壷
 
跡月(*あとつき)を積(つ)みたまま降らぬ雪

Pigeons are disliked because they leave droppings everywhere;

We still cannot see the first snowflakes even though the month has changed.


                        *(別の読み方 : あとげつ)

 
 
自慢して 掛(か)けにうりゆく なま鯨(くじら)

 
 (改 頁)  
 
掃(は)かせる間(あいだ) 皆(みな)が坐(ざ)をたつ
 

Bragging about his new whale meat, he is on his way to sell it for credit;

While the room was being swept, everyone stood up

so as not to get in the way.

 壷

 火にあぶる 手習草紙(てならいぞうし) わるくさき .

 丈
 
うるさく散らぬ 栗の花かな


Thought of burning the calligraphy workbook, but tore it badly;

Chestnut flowers bloom poorly and linger.


 水

 湖(うみ)へだつ 山のあなたの 月涼(すず)し

 壷
 
折(おり)もよく来て 受(う)くる十念(じゅうねん)


Tranquilly clear is the moon over the mountain separating the lake;

Timely arrival to receive the ten recitations.

 丈

 後添(のちぞい)の ことともさせぬ 大家内(*おおがない)

                             *=おおやない
 水

 うかればなしの くどい櫛売(くしうり)

The second wife spends a quiet life in the large mansion with a big family;

The traveling comb seller relentlessly spreads gossip.



 壷

 やくそくの 灸(きゅう)おろすも のびのびに

 丈
 
ぬくいも当(あて)に まだならぬ空

The promise to apply moxa remains unfulfilled,

The warmth of spring is still uncertain.


 

 
土手筋(どてすじ)は 少(すこ)しの花も めだつなり

 

遣(つか)いあまりの 山葵(わさび)いけおく


Along the embankment, a few flowers catch the eye;

In a vase, the leftover wasabi from what was shared as a gift

is arranged.


 
 (改 頁)  
 
いつ出るも 家来(けらい)がわりの 小角力取(こずもぅとり)


 水

 社地も厭(いと)わず 捨(す)つる履物(はきもの)

The little sumo wrestler, always serving like a retainer;

They discard their shoes (and attire) without hesitation

even on sacred shrine grounds.


 壷

水あれの あとの調理の 長引いて

 丈

うまい醤油(しょうゆ)を 遣(つか)う 郷宿(ごうやど)

After hands are roughened from working with water, cooking takes time;

The rustic inn, which acts as an intermediary for court cases,

now uses the finest quality soy sauce.


 水

 積(つ)みてある 嫁の蒲団(ふとん)の 嵩(かさ)厚(あつ)き

 壷
 
昼(ひる)も諸生(しょせい)の 来てはなまめく

The bride’s futons are piled high;

During the day, young monks and disciples visit,

bringing a lively atmosphere
.

 丈
 
米市(こめいち)も拍子(ひょうし)のぬけし月見(つきみ)過(す)ぎ

 水
 
ちいさい鮭(しゃけ)に 破(やぶ)られし網(あみ)

The rice market, once bustling,

now feels empty after the moon-viewing season;

A small salmon tore through the net.



 
( 改 頁)  
 
鉢尼(はちあま)に着古(きふる)しく呉(く)るるそぞろ寒(さむ)

 

 
旅(たび)か薬(くすり)か まめになりけり

Giving old clothes to a begging nun as the weather turned colder;

The journey brought blisters to the feet, but also made the body healthier.


 

 
名(な)ある花 いつしか若い 木に替(か)わり

 

 
鳶(とび)が謡(うた)って 荒らす家(や)の棟(むね)

A renowned flower has quietly transformed into a young tree;

Rumors spread as kites sing freely atop the roof,

troubling the house's owner.


 
 
誘いあう 粟津祭(あわずまつり)の 夕参(ゆうまい)り

 
 
絹(きぬ)け纏(まと)えば 劣(おとる)る風俗(ふうぞく)


Inviting each other to the Awazu Festival at night;

Wearing a silk kimono is as unseemly as the flag-bearer

for the fire brigade without vigor.


 
 
吞(の)みようも挽茶(ひきちゃ)上戸(じょうご)の子細(しさい)なく

 
 
二度と言わせず 取(と)りてやる質(しち)


The terms were accepted without showing any knowledge of tea;

The collateral was received and the money was provided before asked twice.


 



「常夏草」原文の詳細 (解読:木曜古文書会 会員様)

常夏草


(1)

また翌日も日和の風や百日紅

(また翌日も日和の風や百日紅 )


川を境尓
蚊能居らぬ庭


(川を境に
蚊の居らぬ庭)


碓乃安可り工合も
よくなりて


(碓のあがり工合も
よくなりて)


子とも能麁相呵り
人も那し


(子ともの麁相呵り
人もなし)


敷なら寸呉坐に
つやつや朝の月


(敷きならす呉坐に
つやつや朝の月)



露をかふりて
逃る野鼠

(露をかぶりて
逃る野鼠)



何処へでも糞して
鳩の嫌ハるゝ


(何処へでも糞して
鳩の嫌はるゝ)


跡月ヲ積た侭
降らぬ雪

(跡月を積たまま
降らぬ雪)


自慢して
掛尓うりゆくなま鯨

(自慢して
掛にうりゆくなま鯨)


掃せる間
皆可坐をた州

(掃せる間
皆が坐をたつ)


火尓安ふ留
手習草紙わるくさき

(火にあぶる
手習草紙わるくさき)


うるさくちらぬ
栗乃花可那

(うるさくちらぬ
栗の花かな)
常夏草


(2)

湖遍たつ
山のあなた乃月涼し


(湖へだつ
山のあなたの月涼し)


折もよく来て
受る十念


(折もよく来て
受る十念)


後添乃ことゝもさせぬ大家内

(後添のことゝも
させぬ大家内))


う可れ者なし能
くどい櫛売


(うかればなしの
くどい櫛売)


やくそくの灸おろ寸ものひ*のひ尓

(やくそくの灸おろすも
のび*のびに)



ぬく以も当に
またならぬ空


(ぬくいも当に
またならぬ空)


土手筋盤少の花も
めたつ也

(土手筋は
少の花もめだつ也)


遣ひ安万り乃
山葵いけ置

(遣ひあまりの
山葵いけ置)


以つ出るも家来か者りの小角力取

(いつ出るも家来がはりの小角力取)


社地も厭ハ須
捨る履物


(社地も厭はず
捨る履物)


水安連乃阿との調理の長引て

(水あれのあとの
調理の長引て)



うまい醤油を
遣ふ郷宿


(うまい醤油を
遣ふ郷宿)
常夏草


(3)

積てある嫁の
蒲団乃嵩厚き


(積である嫁の蒲団の
嵩厚き)



昼も諸生乃
来てハ奈満めく

(昼も諸生の
来てはなまめく)


米市も拍子のぬ介し月見過

(米市も拍子のぬけし
月見過)



ちいさ以鮭耳
破ら連し網

(小さい鮭に
破られし網)


鉢尼尓着古し呉る
そゝろ寒


(鉢尼に着古し呉る
そゞろ寒)


旅可薬歟
ま免耳奈り介り


(旅か薬か
まめになりけり)


名ある花以つし可
若い木ニ替里


(名ある花いつしか
若い木に替わり)


鳶可謡って
安ら寸家の棟


(鳶が謡って
あらす家の棟)


誘ひ安ふ粟津祭乃
夕参


(誘ひあふ粟津祭の
夕参)


絹気纏へハ
劣留風俗


(絹け纏へば
劣る風俗)


呑やうも挽茶上戸乃
子細奈く


(呑やうも挽茶上戸の
子細なく)


二度と言ハせ須
取てやる質


(二度と言はせず
取てやる質)
 
 現代語と英文試訳へのリンク



英語試訳について

英語試訳の進捗を「箱崎物語」でご覧いただけます。未完成試訳も含まれて

おり、今後も校正・推敲予定です。当サイトの力量不足をお許しいただいた

上で、お楽しみいただけますと幸いです。

校正・推敲に利用したAIの発言を含め、記載内容の文責は当サイトです。



「常夏草」の他の作品について

「常夏草」は全体として四つの部分に分かれています。今回は最初の部分の

長句18作品・短句18作品をご紹介しております。



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ご容赦の上、お差し支えなければサイト管理者へご教示いただけますと幸いです。

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