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事務局・工房くらし月
常夏草
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「もう一冊お選びになると、値引き価格でご購入いただけますよ」
古書店で10数年前に、値引きの数合わせに一冊の本を買いました。
本の題名は「常夏草(とこなつぐさ)」
分類:俳諧
編纂年は丁未(ひのとひつじ)のとし 卯月。
サイズは、縦18、横12センチ。
刷り物師は「 京四条寺町東へ入 御すり物師 近江屋利助 」です。
さて、もし お時間がおありでしたら、ご一緒にファイル整理は
いかがでしょう? ファイル整理があなたの心を動かさない場合は、
よろしければ、ご一緒に「謎解き」はいかがでしょう?
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「丁未のとし」に該当する西暦年をインターネットで探す ささやかな
「謎解き」です。
情報は日々更新されます。ときどき鞄の中からファイルを取り出し、
必要なものと不要なものを分けて整理します。用途があるものは、
最新の情報をチェックし、必要に応じて資料の空欄部分を補い、
保管します。
本日は「常夏草」のファイル整理を。前書きの「丁未(ひのとひつじ)
のとし」の西暦を調べます。「常夏草」は碩水(せきすい)という人物が
北陸を旅したときの俳諧連歌を、苑裘(えんきゅう)という人物が編纂
した和綴じの本です。
最初の手掛かりは 「刷り物師:近江屋利助」。
手順:
① 国立国会図書館デジタルコレクションで
「近江屋利助(おうみやりすけ)」を検索。一冊がヒット。
タイトル:「月見集」。分類:古典籍資料。出版年「不明」。
(古典籍は1868年以前に日本で出版・書写された書物・本)
奥付を確認。(コマ番号「58」)
「皇都四条通寺町東入南側 蕉門御集冊摺物師 湖雲堂 近江屋利助」
と書かれています。 「湖雲堂」という固有名詞に注目し、検索。
② 国立国会図書館デジタルコレクションで「湖雲堂」を検索。
「俳諧百千鳥集」出版年 明治23(1890) 年。湖雲堂( 馬場利助 )
がヒット。明治23(1890)年に注目。
(こちらは1868年(慶応4年 明治元年)以降。古典籍ではない。)
奥付を確認。(コマ番号「94」)
京都市下京区四條通寺町東入二丁目御旅町十七番戸 平民 馬場利助。
「湖雲堂」近江屋利助 と 「湖雲堂」馬場利助 を比較。
住所「四条/條通寺町東入」が共通。同一人物が1868年以前から1890年
以降まで仕事をした可能性。
③ 丁未(ひのとひつじ)をポータルサイトから検索。
1890年前後の丁未(ひのとひつじ)の年を探す。1847年(江戸時代)と
1907年(明治時代)が該当。干支(えと)は60年で一周。
④ 「近江屋利助」をポータルサイトから検索。
(1)「相生集」弘化2(1845)年(国立国会図書館サーチ)。
(2)「四時行(しじこう)」弘化4(1847)年。
(石川県立図書館 デジタル資料図書館の貴重資料ギャラリー)
( 愛知県立大学図書館 「四時行」同上) などがヒット。
下の画像:(奥)インターネット上の「四時行」の表紙と奥付。
(パソコン画面は石川県立図書館さんのサイト )
(手前)「常夏草」(当サイト資料)
結論:
(1)本の形状は1847年発行の「四時行」とほぼ一致。
(2)手順①②④の「奥付」を比較。
住所表記が1847年「四時行」と一致。
「常夏草」は、江戸時代 弘化4(1847)年(丁未のとし)頃の
俳諧連歌で、古典籍の可能性が高いです。
⑤ 念のため、作品「常夏草」の内容を確認。
「常夏草」は古い仮名を用い「草(そう)」の文字で刷られた俳諧。
現代の日常では目にする機会が少ない字体で、サイト管理者の知識では
刷り物全体を読むことができず、今から10数年ほど前に
「木曜古文書会」さんにご教示をいただきました。その折に、
全文の原文解読に現代語訳を添えた資料をお預かりしました。
最初の句は、このように始まります。
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(1) また翌日も 日和の風や 百日紅
(2) 川を境に蚊の居らぬ庭
(3) 碓(からうす)のあかり工合(具合)もよくなりて
(現代かな)解読 木曜古文書会・会員
**************
(3)「からうす」とは何でしょう? なお(3)の「あかり工合」
は「上がり具合」のこと。
⑥ 碓(からうす)をポータルサイトから検索。
(1)(goo 辞書)より抜粋。「から ー うす (唐臼 / 碓)
地面を掘って臼(うす)を据え。杵(きね)の一端を足で踏んで
穀類などをつく仕掛けのもの。ふみうす。」
(2) (コトバンク) 内容はほぼ同上。例文やイラストあり。
⑦ 「からうす」+「時代」をポータルサイトから検索。
少し長いですが、引用します。
「第二次大戦前までは日本全国の至るところ、どこの農家にも土間の片隅に
設置されていて主として女・子供の仕事であったり、雨降りや夜なべ仕事
として男手間で搗(つ)いたものであった。戦後しばらくまではさかんに
使用され農家の必需品であったが、昭和30年頃から電気精米機の普及に
よって急に姿を消してしまった。」
( 引用元:「からうす」の構造からみる三好町の文化圏 2行目から5行目
郷土研究発表会紀要第39号 民族班(徳島民族学会 青木幾男)
徳島県立図書館
昭和30年頃まで使われていたのですね・・・句の中に様々なデーターが
書き込まれています。古い本や資料は、むずかしい言葉が使われていたり、
少しばかりややこしかったりしますが、謎に満ちていませんか?
「常夏草」丁未(ひのとひつじ)は西暦何年? 事務局では、このような
作業をします。いろいろ教えていただいて、作業をしています。
さて、サイト管理者は本の中へぶらぶら歩きに。では、ごきげんよう。
補足事項:
(1)「百日紅」は和名「さるすべり」の当て字で、
初夏から数か月花が咲くことから、夏を象徴する木とされています。
(2)タイトル「常夏草」に「草」という漢字が使われているのは、
江戸初期(1636年)の「花火草(はなひぐさ)」や、また(1645年)
の俳諧作法書「毛吹草(けふきぐさ)」などの例があります。
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