本文へスキップ
お問合せ
事務局・工房くらし月
漢 詩
ミステリー散歩
**********************************************************
はじめに
この漢詩には「二句目」が書かれていません。いくつかの
理由が推測されますが、当サイトでは「ナゾナゾ」ではないかと
考えました。
書の制作者について
この詩の制作者を示す二つの落款印(らっかんいん)があります。
(向かって右から左へ読んでいます)
印① 鎮西(ちんぜい)白文印(姓名印)
(書体:隷書/れいしょ 篆書/てんしょ)
印 ② 釈居 文潮(ぶんちょう)
朱文印(雅号印)
(書体:隷書/れいしょ 篆書/てんしょ)
**********************
制作者の詳細
詳細は、当サイトではよく分かりません。 制作者は、おそらく中国語が堪能な
(おそらく江戸時代の)「鎮西 /文潮」という人物で、石川丈山に心酔しているか、
誰かを もてなす立場だったのではないかと思います。
彼は漢詩の二句目、「常含太古情(常に含む太古の情)」を書きませんでした。
「常に含む」をわざと「含まない」ナゾナゾは話のタネになりそうです。
当時の石川丈山の漢詩の人気を証明しているように思います。
*****************
写真の漢詩の詳細
題:「録韻萃選詩(ろくいんすいせんし)」
① 山気殊人世 〇●〇〇● 平仄平平仄 shān・qì・shū・rén・shì
② 常 含 太古情 〇〇 ●● 〇 平平仄仄平 cháng・xián・tài・gǔ・qíng
(欠落)
③ 四時雲樹色 ●〇〇●● 仄平平仄仄 sì・shí・yún・shù・sè
④一曲澗泉声 ●●●〇〇 仄仄仄平平 yì・qǔ・jiàn・quán・
shēng
⑤ 松風動萬壑 〇〇●●● 平平仄仄仄 sōng・fēng・dòng・wàn・hè
⑥夜泉和之鳴 ●〇●〇〇 仄平仄平平 yè・quán・hè・zhī・
míng
⑦抱琴座空山 ●〇●〇〇 仄平仄平平 bào・qín・zuò・kōng・shān
⑧寫欲入弦声 ●●●〇〇 仄仄仄平平 xiě・yù・rù・xián・
shēng
⑨上弦鸞靏舞 ●〇〇●● 仄平平仄仄 shàng・xián・luán・hè・wǔ
⑩下弦蛟龍驚 ●〇〇〇〇 仄平平平平 xià・xián・jiāo・lóng・
jīng
⑪奇音唯自識 〇〇〇●〇 平平平仄平 Qí・yīn・wéi・zì・shí
⑫世俗能為名 ●〇〇〇〇 仄平平平平 shì・sú・néng・wéi・
míng
およその意味
(*当サイトの超・意訳です)
山の雰囲気は俗世間とは違う
季節とともに色を変える雲や樹々 聞こえるのは谷あいの泉の音
松風は谷を渡り 夜の泉は風に合わせて鳴る
私は誰もいない山の中に 琴を抱いてすわる
はじまりの音を写し取るために
高い音は伝説の鳥が舞うように軽やかに
低い音は伝説の獣(けもの)が唸(うな)るように荘厳に
すばらしい音が自然と聞こえてくる
(
私が書かなかった二句目は 自然と分かるでしょう?)
世間の人々には分かるだろうか
(
さあ世の中の皆様 二句目はなあに?)
************************
石川丈山のオリジナルの漢詩
比較:五言律詩 題 幽居即事(ゆうきょそくじ)
写真の漢詩に使用された石川丈山のオリジナルの漢詩は以下です。
① 山気殊人世 〇●〇〇● 平仄平平仄 shān・qì・shū・rén・shì
② 常含太古情 〇〇 ●● 〇 平平仄仄平 cháng・xián・tài・gǔ・
qíng
③ 四時雲樹色 ●〇〇●● 仄平平仄仄 sì・shí・yún・shù・sè
④ 一曲澗泉声
〇
●●〇〇 平仄仄平平
yī
・qǔ・
jiàn ・quán ・
shēng
⑤ 雨湿鶯衣重 ●●〇〇●仄仄平平仄 yǔ ・tà ・yīng ・yī ・zhòng
⑥ 風暄蝶袖軽 〇〇●●〇 平平仄仄平 fēng・ xuān ・dié ・xiù ・
qīng
⑦ 為詩難至老 〇〇〇●●平平平仄仄 wéi ・shī ・suī・ zhì ・lǎo
⑧ 未使鬼神驚 ●●●〇〇仄仄仄平平 wèi ・shǐ ・guǐ ・shén ・
jīng
およその意味
山の雰囲気は俗世間とはことなり 太古の情をとどめている
季節とともに色を変える雲や樹々 聞こえるのは谷あいの泉の音
雨は鴬(うぐいす)の羽を重く濡らし 風は蝶の羽を軽く羽ばたかせる
私は老年になったが 自然界の精霊を感動させる詩はまだできない
***************************************
詩の形式
漢詩は中国語の音の高低がとても大切だそうです。石川丈山の漢詩の「音」
の基本スタイルは下です。 ( )は「平(ひょう)」「仄(そく)」が逆
でも許容される位置を示しています。
①(仄)仄平平仄 ②平平仄仄平 ③(平)平平仄仄 ④(仄)仄仄平平
⑤(仄)仄平平仄 ⑥平平仄仄平 ⑦(平)平平仄仄 ⑧(仄)仄仄平平
一方で、写真の漢詩は12句からなる五言古詩の「二句目」が何らかの事情で
書かれていません。古詩には厳密な「平仄(ひょうそく)」のルールは
ないそうですが、「韻(いん)」のルールのほかに句数を偶数でととのえる
約束があるそうです。写真の漢詩は二句目が書かれていない以外は、中国語
として心地よい音で構成されているそうです。
写真の漢詩の読みと平仄(ひょうそく)は、2017年3月に哲学の論文と格闘中
だった黄さんにご協力いただきました。情報交換には英語を用いました。日本
語訳および、なぞなぞという発想、内容全般の文責は当サイトです。誤認・
誤記があると思います。お気づきの場合はご容赦の上、お手数ですがご教示い
ただけますと幸いでございます。
撮影:工房くらし月 日本の里山 (福岡県 大分県)
*******************
終わりに
写真の漢詩の真実と詳細は「謎」ですが、派生的な関心が一つあります。
当サイトの地元(福岡県)に「亀井
南溟
(かめいなんめい)1743-1814」
という儒学者がいました。その人物の先生で「
西溟
(せいめい)
(1676-1768)」
という黄檗宗(おうばくしゅう)の僧がいました。九州の詩文の発達に貢献
した人物として「儒林評(じゅりんひょう) 広瀬淡窓/著」に名前が挙げられて
います。(「西溟:大潮元皓(だいちょうげんこう)」については「淡窓全集
(中巻)儒林評P7の後ろから3行目~ /日田郡教育会 1926年、1927年)」で
ご覧いただけます。国立国会デジタルコレクションで検索できます)
「
南溟
(1743-1814: 亀井南溟)福岡県」の師が「
西溟
(1676-1768)
大潮元皓
(だいちょうげんこう)佐賀県」
なので、
「文
潮
鎮
西
(詳細不明)」と「大
潮/
西
溟(1676-1768)
佐賀県
」との関係に興味があります。理由は名前が似ている
からです。単に似ているだけかもしれません。
中国由来の文化は、漢字も漢詩もとても奥が深いと思います。
***********************
2015年夏 アジサイ谷にて。セッティングと撮影:時間の博物館
(時間の博物館 所蔵史料)
トップ頁
********************************
copyright: 2019 時間の博物館 2001
ナビゲーション
トップ頁
コンセプト
史料リスト
事務局
活動内容
お問合せ
バナースペース
shop info
店舗情報
時間の
博物館
PRIVACY POLICY
FACEBOOK
TWITTER
BLOG
ENGLISH
事務局:工房くらし月
福岡県福岡市