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 常 夏 草 2   (五七五)


丁未(ひのとひつじ)の年


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1847年頃の、石川県を舞台にした冊子「常夏草」(分類:俳諧)から

70代と80代の男女22名で詠われた部分を抜粋してご紹介いたします。


*原文:草書の縦書きで変体仮名を使用。

*解読:木曜古文書会の会員様のご協力をいただきました。


今回は、一部を現代の表記に当サイトで改め、

情景を理解する一助として英語の試訳を添えています。


(文責:表の現代語と英文試訳 当サイト) 原文へのリンク

 
きのうにも 降るべきものを 春の雨


The spring rain I wish had fallen yesterday.
 84歳

 鶯(うぐいす)や ほうとひと声 先(さき)ばらい


The nightingale uttered a single "hoot" to herald the passage of a nobleman.
 83歳

自分出て 摘(つみ)たきものを 買う薺(なずな


Longing to gather from the field myself, ended up buying the shepherd's purse.
 82歳

 かきつばた 誉(ほ)めていたれば 人(ひと)も来る

As I admired the irises, others gathered around.
 82歳
 
五月雨(さみだれ)や すわりながらも 身のしめり

During the early summer rains, I feel damp even when sitting indoors.
 83歳
 
花守(はなもり)も しらぬ日に来て はつ桜(さくら)

On a day unknown even to the flower guard, the first cherry blossoms are admired.
 82歳

 ほととぎす 鳴きぬ 寝よとの 鐘も鳴る

The cuckoo sings and the bell tolls urging us to rest.
 79歳
 (改 頁)  
 
あまり日(ひ)の 永(なが)さに人(ひと)も 来(こ)ざりけり
 

The days are too long, and no one has come to visit.
 73歳

 山もまた かげ日南(ひなた)あり うめの花

The mountain, too, has both shadowed and sunlit spots, oh plum blossoms.
 76歳
 
念(ねん)いれて 水(みず)見ているや けさの秋


Contemplating as staring at the water on this autumn morning.
 71歳

 時(とき)問(と)うて 人の通るや きじの声(こえ)

A passerby maybe inquired about the time as pheasant’s call echoed.
 70歳
 
蕣(あさがお)や 誘(さそ)いにまわる 役羽織(やくばおり)


The morning glories bloom, officials in haori coats beckon people to join them.
 71歳

 黄鳥(うぐいす)は 聞古(ききふる)せども ほととぎす

Though grown weary of the nightingale’s song, it seems the little cuckoo now takes up the melody.
 73歳

 その匂(にお)い 人待(ひとまつ)さまや 茨(ばら)の花

The fragrance of wild roses, as if waiting for someone.
 75歳

 とることを 知らぬ子にやる 蛍(ほたる)かな

Given a firefly to a child who doesn’t know how to catch them.
 73歳
 (改 頁)  
 明(あく)るにも 暮(くる)るにもただ 山わらう

When dawn breaks or dusk descends, the spring mountains seem to smile.
 72歳

 里(さと)の灯(ひ)の 遠くに見えて 鴨(かも)の声

The distant glow of village lights, accompanied by the sound of ducks.
 74歳

 海を出て 海に入(い)りけり 夏の月

The summer moon rises from the sea and returns to it..
 71歳

 炭(すみ)の香(か)や 少し風(かぜ)ある 戸(と)のひびき

The scent of charcoal mingles with the faint rustling of the door.
 75歳

 草(くさ)のうえ 行(ゆ)くゆく ぬるむ 野水(のみず)かな

As I walk across the grass, the wild water gradually becomes warmer.
 73歳
 
こんつめて ちさき望(のぞみ)や 椎(しい)拾い

Patiently gathering sweet acorns, nurturing a tiny hope.
 75歳
 
すずしさや 座敷の客の いとまごい

As the air grows cooler, the guests in the tatami room bid their farewells.
 71歳


今から16年か17年前のことです。

勤め先の専門学校の休暇を利用し、青春18切符で箱崎から京都へ行きました。

旅の目的の一つは、明治時代の教科書をさがすことでした。京都の、ある古書店

で目的にかなう本を4冊見つけた際に、もう1冊買うと値引きしていただけるという

ので、手近にあった小冊子を「数合わせ」として買い足しました。

その冊子が「常夏草」です。


旅から戻り、小冊子の内容を確認すると、それは 面白い文字で刷られていました。

私の能力で的確な読解は無理。

木曜古文書会の会員様が全文を解読してくださいました。感謝に堪えません。

江戸時代(1847年)の情緒をお楽しみいただけますと幸いです。


「常夏草」原文の詳細 (解読:木曜古文書会 会員様)

常夏草

(1)

きのふ尓も降へ支ものを春能雨


(きのふにも降べきものを春の雨)


鶯やほうとひと声
先者らひ

(鶯やほうとひと声
先ばらひ)


自分出て摘たき物を
買薺


(自分出て摘みたきものを買う薺/なずな)


か支つ者た誉て居たれハ人も来留

(かきつばたていたれば人も来る)


五月雨や寸ハり奈可らも身の志免り

(五月雨や すわりながらも身のしめり)


花守も志らぬ日尓来て者つ櫻

(花守も しらぬ日に来て はつ櫻)


本とゝき数鳴きぬ寝よとの鐘も奈る

(ほととぎす鳴きぬ
寝よとの鐘もなる








常夏草

(2)

安まり日能永さに
人も来さり介り


(あまり日の永さに
人も来ざりけり)


山も満たかけ日南
阿りうめ乃花


(山もまた かげ日南
あり うめの花)


念いれて水見て居
るや介佐の秋


(念入れて水見て居る
や けさの秋)


時問ふて人の通るや
きじの声


(時問ふて人の通るや
きじの声)


蕣や誘ひ耳まハる
役羽織


(蕣/あさがおや
誘ひにまはる役羽織)


黄鳥ハ聞古せとも
ほととき須


(黄鳥/うぐいすは聞古
せども ほととぎす)


其匂ひ人待さ万や
茨能花


(其匂ひ人待さまや
茨の花)


とることを知らぬ子
尓や流蛍哉


(とることを知らぬ子
にやる蛍哉)

常夏草

(3)

明留尓も暮流尓も
只山わらふ


(明るにも暮るにも只
山わらふ)


里の灯乃遠く仁見へて鴨の声

(里の灯の遠くに見へて鴨の声)


海を出て海耳入介り
夏の月


(海を出て海に入りけり夏の月)


炭乃香や少し風ある
戸のひゝき


(炭の香や少し風ある戸のひゞき)


草のうへ
行々ぬるむ野水哉


(草のうへ行々ぬるむ野水哉)


根ンつめて
ちさ支望や椎拾ひ


(根んつめてちさき望や椎拾い)


すゝしさや坐敷乃客乃いとま乞

(すずしさや坐敷きの客のいとま乞)








 
(原文 解読:木曜古文書会 会員様) 現代語と英文試訳へのリンク



英語試訳について

当サイトで試訳した英文を、AIを利用して校正しました。

AIを利用した校正(詩歌関連)は、当サイトでは初めての試みでした。

進捗概要を「箱崎 夏物語」として、サイト内「物語」でご紹介予定です。


「常夏草」の他の作品について

「常夏草」は全体として四つの部分に分かれています。今回は二番目の部分の

22作品をご紹介しております。


「常夏草」に関する他の記事

 サイト内記事へのリンク


追伸:当サイトによる誤認やミス、引用先の不記載などに お気づきの場合は

ご容赦の上、お差し支えなければサイト管理者へご教示いただけますと幸いです。

平素のご教示とご協力に感謝申し上げつつ。


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