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事務局・工房くらし月



 常 夏 草 (第三部)  長句(五七五)+短句(七七) 


丁未(ひのとひつじ)の年


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冊子「常夏草」(分類:俳諧連歌 1847年) 第三部

碩水/せきすい 苑裘/えんきゅう による連句(長句18作品+短句18作品)。

*原文:草書の縦書き / 変体仮名


(PHOTO:工房くらし月)


学習用途でご利用の際は、お手数ですが必ず「原文」「原文解読」をご参照く

ださい
。「原文」「原文解読」以外には、読みやすさを考慮し、当サイト

でアレンジをした部分や、当サイトの理解不足による誤記が含まれる可能性が

あります。ご了承の上、お楽しみください。



(文責:表の現代語と*英文試訳 当サイト) 原文へのリンク

現代語
(一部、旧仮名遣いを使用しています。)

*英語試訳は校正未了を含みます。
 
閙(さわが)しう鳴(ない)て長居や

行々子(ぎょうぎょうし)

碩水
發川(はつかわ)通る麦あきの舟


A noisy reed warbler chatted away for a long time;
A boat was passing by on the gentle flowing Hatsukawa River
in the early summer.

苑裘
請(う)け売(う)りの酒もなくなる雨晴れて


掻(か)き散らしては消(き)やす莨(たばこ)火

The sake purchased from the sake brewery is gone and the rain is over;
Stirring and scattering the tobacco ashes to extinguish the fire.


頓(やが)て出る月をもまたず往(ゆ)く用意


鳥が渡りて隙(ひま)な役(やく)むき

Preparing to go without waiting for the moon to be appearing soon;
Being left with nothing to do after the migratory birds have departed.


しんとして本町筋の暮(くれ)の秋

権化(かんげ)たのんでまわる小坐頭(こざとう)

The evening on Honmachi-suji is completely quiet in autumn;
A small, blind person (called ko-zatou) is going from house to house
asking offerings.

裘  
あれならと思ふた聟(むこ)に縁があり


くらがり向いて箱の蓋(ふた)とる


The man who impressed well is now the groom;
Facing the darkness and opens the lid of the makeup box.

ふうわりと炬燵(こたつ)に懸(かけ)しさらふとん

天気がわりの海鳴りがする

Softly draped a new futon over the kotatsu;
The ocean sounds signaling a change in the weather.

友達にわかれて戻る橋の月


今しばらくは扇子(せんす)置かれぬ


After leaving a friend, saw the moon above the bridge:
It is still hot and you cannot leave the sense (paper fan) for a while.

稽古(けいこ)にはつよい角力(すもう)の嘘にまけ

講中(こうじゅう)だけは傘(かさ)貸(かせ)る也

A sumo wrestler, strong in practice, seems to have purposely lost a match;
An umbrella can be borrowed by only the certain group members.

湖(みずうみ)で取れるさかなは花の料(りょう)

茶にする枸杞(くこ)をなぐさみに摘(つ)む

The fish caught in the lake is used for the payment for flowers;
Being bored so picking goji berry leaves to make tea.

日のさして春の布子(ぬのこ)の着ぶくれる

仝(裘)
他処(よそ)へもつゝと皃(かお)の利(き)く兄

The frugal jacket padded with cotton becomes plump and bulging
in the spring sunlight;
Elder brother has a strong presence even in the other places.

先々(さきざき)へ寝釈迦(ねしゃか)のお宿(やど)うけたがり

一本松の陰(かげ)の涼(すず)しき

Hoping to stay at Neshaka Inn in the future;
The shade of the lone pine tree is cool.


いつぞやの恨(うら)み今更(いまさら)いへもせず

盛(さか)りの奥(おく)の痩(やせ)のもどらぬ

It is too late now to confess the grudge held from some time ago;
The wife in the prime of her life has lost weight and is still thin.


霰酒(あられざけ)つくり覚へて造(つく)らるゝ

生け捕り(いけどり)にして逃がす大鼠(おおねずみ)

Learned how to make sake with rice cake (called arare)
and now someone else is making it;
A big rat that you caught alive and let it go.


形(なり)ふりを見ても木挽(こびき)としれる也

渡(わた)しの銭(ぜに)をふせにしたかる

You can tell from the way that the person is a woodcutter;
He wants to make the ferry fee an offering to the Buddhist monk.

飛虫(とびむし)の 中に虫鳴く 昼の月

機具(はたぐ)あつめて仕舞(しま)ふ盆前

Among the small insects flying, the sounds of autumn insects can be heard;
The weaving tools are put away before the Bon festival.

九万疋(くまびき)を嘉例(かれい)のやうに呉(くる)る爺(じい)

かるい疱瘡(ほうそう)のはやる七浦(ななうら)

The old man gives *mahi-mahi, as if it were *flounder;
A mild case of smallpox is spreading in Nanaura.

*mahi-mahi:a fish traditionally used as a celebratory gift.
* flounder : a fish common to the citizens.

雨気(あまけ)やらどんみりしたる鐘(かね)の声

立ち回れども ささぬ春の蚊(か)

Probably because it might start raining,the sound of the bells is heavy;
Spring mosquitoes are flying around, but they don't bite.

いながらに 数ある花の 見ゆる家

あつらへ多き 内職の雛(ひな)

It is a house where you can see a lot of flowers without leaving the house;
The furnishings for the Hina dolls are many, which are made as a side job.



「常夏草」原文の詳細 (解読:木曜古文書会 会員様)
常夏草第三部

(1)

閙しう鳴て長居や
行ゝ子

(閙しう鳴て長居や
行々子 )



發川通る
麦阿き乃舟

(發川通る
麦あきの舟)



請売の酒もなく那る雨者れて

(請売の酒もなくなる雨はれて)


掻ちらして盤
消や寸莨火

(掻きちらしては
消やす莨火)



頓て出る
月をもまた須往用意


(頓て出る
月をもまだず往用意



鳥可渡て
隙奈役むき

(鳥が渡て
隙な訳むき)


























常夏草第三部

(2)

志んとして本町筋の
暮能秋


(しんとして本町筋の
暮の秋)



勧化たのんて
まハる小坐頭


(勧化たのんで
まはる小坐頭)


阿連奈らと
思ふた聟尓縁可安り

(あれならと
思ふた聟に縁があり)



くらかり向以て
箱の蓋と流


(くらがり向いて
箱の蓋とる)



ふうわりと炬燵尓
懸しさらふとん


(ふうわりと炬燵に
懸しさらふとん)



天気かハりの
海鳴可春る


(天気がはりの
海鳴がする)



友達尓わ可れて戻る橋の月

(友達にわかれて戻る橋の月)


今志者らく盤
扇子置れぬ

(今しばらくは
扇子置れぬ)











常夏草第三部

(3)

稽古尓盤つ与い
角力乃嘘尓まけ


(稽古にはつよい
角力の嘘にまけ)



講中たけハ
傘貸る也

(講中だけは
傘貸る也)



湖て取れるさ可奈ハ花能料

(湖で取れるさかなは花の料)


茶に春る枸杞を
奈くさミ尓摘

(茶にする枸杞を
なぐさみに摘)



日のさして春能布子乃着ふくれる

(日のさして春の布子の着ぶくれる)


他処へもつゝと
皃の利く兄


(他処へもつっと
皃の利く兄)



先々へ寝釈迦の
お宿うけた可り


(先々へ寝釈迦の
お宿うけたがり)



一本松の
陰乃涼し支


(一本松の
陰の涼しき)











 
常夏草第三部

(4)

い州そやの
恨今更以へもせ須


(いつぞやの
恨今更いへもせず)



盛能奥乃
痩のもとらぬ

(盛りの奥の
痩のもどらぬ)



霰酒つくり覚へて
造ら留々


(霰酒造り覚へて
造らるる)



活捕尓して
逃寸大鼠

(活捕にして
逃す大鼠)



形ふりを見ても
木挽と志れる也

(形ふりを見ても
木挽としれる也)



渡し乃銭を
ふセ尓志た可流


(渡しの銭をふせにしたがる)


飛虫の中尓虫鳴
昼乃月


(飛虫の中に虫鳴
昼の月)



機具あつ免て
仕舞ふ盆前

(機具あつめて
仕舞ふ盆前)
















 
常夏草第三部

(5)

九万疋を
嘉例乃やう尓呉る爺


(九万疋を
嘉例のやうに呉る爺)



可る以疱瘡の
者る七浦

(かるい疱瘡の
はやる七浦)



雨木やら
とんミりしたる鐘の声

(雨木やら
どんみりしたる鐘の声)



立ま者連とも
さゝぬ春乃蚊

(立なはれども
さゝぬ春の蚊)



居奈可らに
数阿る花の見ゆる家

(いながらに
数ある花の見ゆる家)



安つらへ多き
内職の雛

(あつらへ多き
内職の雛)































常夏草(冒頭の文)

常夏草冒頭1
常夏草冒頭2

(現代かな)

(碩水叟ことし都の華見をはじめとし)

(ただちに北陸のかたへ杖を巡らし此の金城の)

(もとのほとときすにみみをかたむけ)

(諷詠まめやかなりけり さればさいつ年)

(筵をともになしたる風子は更なり 其よの)

(人々も旅兼の閑を訪ひ連吟あり)

(ほくあり こをくしけの底にし紙虫の)

(巣になさん事の口をしければ そが一二を)

(拾ひてささやかなる綴り物となさば可ならん)

(やと囁者あり そは烏呼のしはざながらも)

(八重葎の繁きたくみならねばいとよし)

(よしとうけがひ一閑舎のあるじ苑裘)

(しるす)


(丁未のとし 卯月)





現代語と英文試訳へのリンク


英語試訳について

未完成試訳も含まれており、今後も校正・推敲予定です。当サイトの力量不足を

お許しいただいた上で、お楽しみいただけますと幸いです。

校正・推敲に利用したAIの発言を含め、記載内容の文責は当サイトです。



「常夏草」の他の作品について

「常夏草」は全体として四つの部分に分かれています。今回は第三部の

長句18作品・短句18作品をご紹介しております。



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ご容赦の上、お差し支えなければサイト管理者へご教示いただけますと幸いです。

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