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事務局・工房くらし月


香春の伝説を追う試み (後 編)


秘書のファイリングかばん

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心の中であなたを


中編の続きです。

10分間の休憩が終わり、参加者 8名 が着席しています。


司会: では、先ほどの続きを再開します。会話を はじめてください。



山門(やまと)と香春(かはる)


C: 福岡県には、山門(やまと)郡に住んでいた部族の女王(田油津姫 /

たぶらつひめ)の伝説があるわ。山門(やまと)郡は有明海(ありあけかい)

に面した場所。ざっくり言って、その海は時計回りに長崎・佐賀・福岡・熊本

の四県に抱(いだ)かれている感じ。田油津姫の兄が夏羽(なつは/なつば)で、

現在の田川市の香春岳(かわらだけ)の近くに住んでいた。夏羽が住んでいたの

は内陸部。地図では向かって右に京都郡(みやこぐん)があり、香春、京都郡

(みやこぐん)、そして行橋市(ゆくはし し)。その先には周防灘 (すおうなだ)

が広がり、海を渡ると山口県の佐波(さば)があるわ。 周防灘 は 豊前海

(ぶぜんかい)とも呼ばれるそうよ。大分の姫島が南の境界線の一点。


田油津姫(たぶらつひめ)が暮らしたのは、行橋市から西へ九州を横断したところ。

有明湾の奥の広大な平野を、田油津姫は治めていたみたい。なお、有明海(ありあけ

かい)は最近の名前で、古くは地域で名前が異なったそうよ。

彼ら一族が、いつ頃、どのようにして土地に住みついたかは謎。二人は気長足姫

(おきながたらしひめ)に滅ぼされたと伝わっているわ。


A: なぜ、滅ぼされたの?

C: 田油津姫(たぶらつひめ)が 気長足姫(おきながたらしひめ)に、良くないこと

を企(くわだ)て、そのことが発覚したそうよ。

A: なぜ?

C: そこが謎。 


A: 香春(かわら)のあたりに住んでいたのは兄の夏羽(なつは)?

C: ええ。夏羽は香春のそばの夏吉(なつよし)という地区に住んでいたら

しいわ。夏吉の古名は夏焼村(なつやきむら)。伝説によれば、気長足姫の軍

は山門(やまと)の田油津姫(たぶらつひめ)を滅ぼしたあとに、妹を助け

に駆けつけた夏羽を香春まで追って行って火を放ったらしいわ。


A: お墓はどうなっているの?

C: 田油津姫の墓所はみやま市(旧山門郡)にあり、明治時代まで女王塚と呼ば

れていたけれど、大正2年頃に古墳を分断して道路が建設されたそうよ。

それから蜘蛛塚(くもづか)となったらしいわ。

A: 夏羽は?

C: 彼について見つかったのは、城ごと火を放たれたて亡くなったという情報まで。


土蜘蛛(つちぐも)伝説


E: 田油津媛(たぶらつひめ)と夏羽(なつは)には、神夏磯媛 ( かん

なつそ ひめ / かむ かし ひめ)という先祖がいたらしいよ。北部九州の部族の

女首長で、*第12代天皇が九州の熊襲(くまそ)を調伏(ちょうぶく)するため

に九州に来たときに面会している。


A: 第12代天皇?気長足姫(おきながたらしひめ)の夫は14代だから、2代前ね。


E: そう。日本書記では、部族の首長が命(みこと)を出迎えるときは、一族の

山から賢木(さかき)を抜き、枝に品物をかけて出迎えていて、その品が部族の

出自(しゅつじ)を示す証拠に見えなくもない。 夏磯姫(なつそひめ)が持参し

た品物は、皇室に伝わるという宝物の名前にそっくりだ。


A: どんな品を夏磯姫(なつそひめ)は持参したの?


E: 八咫鏡(やたのかがみ)・ 八握剣(やつかのつるぎ)・八尺瓊(やさかに)。

A: 皇室の宝物は?

E: 八咫鏡(やたのかがみ)・草薙剣(くさなぎのつるぎ)・八尺瓊勾玉

(やさかにのまがたま)。


A: 八咫鏡(やたのかがみ)が一緒だわ。


第12代天皇(景行天皇)と三人の使者


A: ええっと、ツヌガアラシト(加羅・任那)と関係があるのは10代と11代の

天皇で、アメノヒボコ(新羅)と関係があるのは11代天皇だったわ。夏磯姫

(なつそひめ)は、次の代の天皇を出迎えたのね。


E: そう。九州へ部族の討伐に来た12代天皇は、娑麼(さば:山口県佐波)

のあたりから、夏磯姫(なつそひめ)に三人の使者を送った。使者の名前は

夏花(なつはな)と、ウナテ。ウナテはアカルヒメノカミ(国前 / くにさき)

と関係があるようだ。残る一人の使者は初代天皇の子孫で*皇別氏族(こうべ

つしぞく)。

(*皇別氏族 / こうべつしぞく:臣下となった天皇家の子孫)


A: 香春神社の三の岳のご祭神は、初代天皇(神武天皇)の妻の母=国前

(くにさき)のアカルヒメノカミでしょ? それがウナテと初代天皇の子孫が

使者に選ばれた理由かもしれない・・・でも、夏花が使者に選ばれたのはなぜ?


E: そこが謎。夏花は物部氏(もののべうじ / 祭祀を営む)の祖らしいが・・・。

夏磯姫(なつそひめ)は、威儀を整えて12代天皇を出迎えた。彼女が賢木

(さかき)の枝に掛けた剣は、十種(とくさ)の神宝で、ニギハヤヒノミコトの

一族の証拠らしい。

A:  ニギ・・・ハヤヒ・・ノミコト?

E: 二の岳と三の岳の祭神には男児が二人いたという*説があるんだ。あくまで、

一説として。

〈*説:日本書紀一書)


香春岳のご祭神の確認


A: ええっと・・・二の岳は忍骨命(オシホネノミコト=アマテラスの子)。

三の岳は・・・トヨヒメ(=アカルヒメノカミ=初代天皇の外祖母=*万幡姫)

そして、ええっと・・・、一の岳は、朝鮮半島へ経営上の用事で行った鍛冶の

女神で、玉から生まれた男神の子孫。


E: うん。二の岳と三の岳のご祭神の子は、省略した呼び方をすると、

ニギハヤヒ (兄)と 二二ギ(弟)。ニニギが 初代天皇 の 曾祖父。ニギハヤヒ

は、ニニギより先に、状況を整えるために日本へ来た神と神話は伝えている。

他に、ニギハヤヒとニニギを父子と考える説もある。


A: 12代天皇と夏磯姫(なつそひめ)は面会して、そして、どうなったの?

E: 夏磯姫(なつそひめ)が天皇に政治的な進言(しんげん)をしたようだ。

九州の どの部族を討伐するべきかについて情報を流した、と日本書紀は伝え

ているよ。


(*万幡姫:萬幡豊秋津師比売命/よろづはたとよあきつしひめのみこと。

この女神には古事記・日本書紀に複数の名前があります)

*ニニギ(瓊瓊杵尊/ニニギノミコト 漢字は他の表記もあります)

*ニギハヤヒ(饒速日命/ニギハヤヒノミコト 漢字は他の表記もあります)



海外の文明(夏 / か)


D: 伝説では中国の最古の王朝は「夏(か)」だけれど、夏磯媛(ナツソヒメ)

や夏羽(ナツハ)と関係はあるのだろうか。

E: *ある文書に、夏(か)が滅び、夏(か)の帝(みかど)の子孫が*越(えつ)

へ封殺(ふうさつ)されたと書いてある。また、(日本)の女王の国では自分たち

を*太伯(たいはく)の末裔と信じていた、と*書いた文書もあるようだが・・・

どうなんだろうね。謎だな。

(*ある文書:魏志倭人伝)(* 魏略逸文: 翰苑、唐、雍公叡注)

(*越 / :えつ 中国南方。長江流域の国。紀元前600年頃-紀元前306年。)

(*太伯:たいはく:紀元前12世紀-紀元前11世紀頃の人物)


日本に関する伝承



D: 太伯(たいはく)って、そもそも誰?

E: ・・・ネット情報では、とても昔に、中国の古代の王朝(周/しゅう)に三人

の兄弟がいて、末子(まっし)に国を継がせるために二人の兄がよそへ行ったらし

い。中国では、日本は長男の太伯(たいはく)の末裔とする説が古くからあるよう

だ。日本では、その説に対して肯定派も否定派もいるそうだが、説としては認識さ

れたものらしい。

D: 諸説あるんだな。


E: 志賀島(しかのしま)の金印も唯一無二のものではなく、中国が従属を誓う

倭人の首長に さずけていた品らしい。蛇(へび)のつまみ(鈕/ ちゅう)は、

素潜(すもぐ)りで魚をとる中国東南の民族(倭人 )に与えられた品らしいよ。

その説によると、日本も東南の諸民族に含まれていたらしい。魏志倭人伝(ぎし

わじんでん)に、害獣から身を守るために、体に蛇(へび)のような線などを描

いている民族が、(日本に)暮らしているとある。


B: いろいろな説があり意外性があるね。中国の 夏王朝 の 姓 は 何というの?

E: ええっと、夏后(かこう)氏。夏(か)の創始者の別称は 夏 禹(か う)。

D: 「禹 / う」は、蛇や龍を表す漢字だ。

E: 中国の王朝は・・・夏・・殷・・周・・秦・・漢・・早い段階から複雑に

展開していくね。

A: 日本へ来ていたのは新羅(しんら)や百済(くだら)や加羅(から)の人々

だけではないかもしれないのね。

E: おそらく。


古代の文明


A: 倭人(わじん)は、そもそも どこから来たのかしら。

C: 福岡では3万4千年前に人類が居住していた跡が見つかっていて、3万4千年

は私たちが習った西暦(せいれき)の17倍の時間よ?私たちは今とは別ルールの

文明から生まれたのかもしれない。

そこには、巨人がいたかもしれないし、異世界人がいたかもしれないし。

B: 7千年ほど前に*海底火山が超巨大噴火を起こしている。九州南部から大陸

へ逃げた人々が、避難先から 故郷の土地 へ帰って来たのかもしれないし・・・

どんな文明や人々の移動があったのか。SFの領域だな。


(*鬼界/きかいカルデラ : 大隅(おおすみ)海峡にある海底火山。

九州南部の縄文文化を壊滅させたと考えられている。)


万葉集の歌 1768番・1769番



司会: 残り時間7分です。最後に、紐児(ひものこ)の残り2首をお願いでき

ますか。

ABE: 賛成。

D:  画面をシェアするね。原文 と 大意 だけです。

【1768番歌: 原文 石上 振乃早田乃 穂尓波不出 心中尓 戀流比日】

大意: 顔や様子には出さず、ずっと心の中であなたを想い続けています。


【1769番歌:原文 如是耳志 戀思度者 霊剋 命毛吾波 惜雲奈師】

大意: あなたのことが慕わしく、生命を失ってもかまわない。


D: こんな感じだ。

A: 紐児(ひものこ)は、どんな人生だったのかしら。日矛(ヒボコ)、

紐児(ひもこ)、比売碁(ひめこ:曾社)、卑弥呼(ひみこ)・・・

まあ、みんな似ているわ。日本は、謎に満ちているのね。


C: どんなルールの、どんな世界だったのかしらね。


散 会


司会: ありがとうございます。そろそろ制限時間です。

今回のテーマの発案者のHさん、いかがですか?


H: ありがとうございます。アイデアがいろいろ見つかりました。


司会: この後に懇親会がありますので、続きはそちらでお楽しみください。

後ほど、今回の練習 に関するアンケートをメールでお送りいたします。

回答に ご協力をお願いいたします。

では、今回の試みは、これをもちまして終了とさせていただきます。

ありがとうございました。


まとめ

ご訪問をありがとうございました。


「否定せずに聴く・発言する」展開練習(例)。 

練習課題は【 地元(福岡県)の 伝説 を活用して物語(SFロマン)を書くための

着眼点とするべきアイデアを集める。】でした。



           終わり              



追伸:誤認やミス、引用先の不記載などがあると思います。お気づきの場合は

ご容赦の上、お差し支えなければサイト管理者へご教示いただけますと幸いです。

平素のご教示とご協力に感謝申し上げつつ。


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